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Oculus Riftで実際に起きた暴行事件を撮影するゲーム「Use of Force」から見る未来の報道の姿とは

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報道は�“知らせる”から“体験を共有する”に進化する。 2010年5月、メキシコからアメリカに入国しようとしていた一人の男性が国境警備隊に集団リンチを受けて死亡した。のちに大きな問題として取りあげられるきっかけになったのが、ある民間人が偶然携帯電話で撮影していたビデオだった。Nonny de la Peñaさんによるインスタレーション「Use of Force」はこの事件をOculus Riftを使ったVRで “現場に偶然居合わせた一人の人物” の目線をゲーム形式で体験することができる。目の前で延々と行われる暴行を見ていることしかできず止める手段はないが、携帯電話を使いその様子を撮影することができる。しかし撮影時間は1分と限られており約4分の体験時間中どのタイミングを、どのアングルで撮影するかがゲームの軸となる。この作品は事件の凄惨さを訴えながらも、撮影するという行為が一種の高揚感や「驚くようなことが起こってほしい」と期待してしまう人間の心理を実は誘引しているのでは、という報道にまつわる複雑で人間的な問題も同時に提起しているように感じた。報道という行為が持つ神聖さと欲望を同時に感じられるのがこの作品の優れた点だろう。 一方でVR体験という “リアリティ” によって報道をさらに深く体感できるのではないかという提案は、未来の報道の形を考える上で重要なポイントではないだろうか。このディスプレイの向こう側、国の向こう側で起きる事件を我々は体感する術はない。そこが砂漠のど真ん中なのか、グリーンバックなのか、画面の向こうの砂埃も、そこで生きている人間の息遣いも、カメラの手前側に広がる風景もわからない。このインスタレーションのようなVRという技術によって感じ取れる情報量は格段に増え、事件を体感できる時代が来るはずだ。ただ、その生々しすぎるリアリティが本当に人間を幸せにするかどうかは疑問ではある。それでも技術は進歩する以上報道の姿が変容していくのは避けられれない。「報道する側」「される側」という二分された世界から「報道という体験を共有する」世界を我々がどう受け止めていくべきなのか、考えなければならない時が確実に近づいている。

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