東日本大震災からの復興をテーマにした今回の東北大学での白熱教室は、
NHKの企画により実現した。
白熱教室を行うのは、
対話形式の授業を行うハーバード大学政治学部教授マイケル・サンデル氏。
サンデル教授の質問は、時にはストレートで、時にはカーブで、
そして時にはそれが論争にも発展するそうだ。
その論争こそがテーマを理解するうえでは非常に重要なことである。
そう語ったのは東北大学理事 花輪公雄氏である。
今回どんな論争が巻き起こり、そこに何が見えてくるのだろうか。
本来のサンデル氏の白熱教室では、
ある「仮定」の質問に対して回答するという形をとっているが、
今回は「仮定」ではなく、事実や現実に基づいた問題、
つまり、東北の方が感じている苦しみや戦い、
日々の問題をテーマに議論をしていく。
参加した人々を試す問題ではなく、
哲学そのものを試そうという問題だ。
私たちが共同体として大きな課題に直面した時にどう議論していくのか。
これは日常生活における哲学の実験だ。
ある参加者は、東北の人の自己犠牲が強いという反面、
本音でぶつかり気まずい思いをするならば議論を避けてしまうという、
このような気質の中では、今回の白熱教室はうまくいかないだろうと、
サンデル教授へ勇気挑戦状をたたきつけた。
サンデル教授は、それをすばらしい勇気とたたえ、
その挑戦を受けてたったのだ。
そして、この場でうまくいくことを証明すると宣言した。
いよいよ白熱教室のスタートだ。
まず、将来の復興に対する期待について聞きたいというサンデル教授。
復興がうまくいくと楽観的に考えているか、
うまくいかないと悲観的に考えているか。
会場全員にプログラムの赤と白のどちらかを掲げるという方法で尋ねた。
結果はだいたい半々だ。
そして次は汚染された土をどうすればいいのか、
それらの仮置き場が家の近くにあってもいいと思うかどうか、
これも同じ方法で会場全員に尋ねた。
やはり結果は半々といったところだろうか。
少し受け入れられないという人のほうが多いようだ。
では、仮置き場さえ家の近くに置きたくないなら、
汚染した土壌はどこに置くべきなのか?
サンデル教授の質問がどう議論へ発展するのかが興味深い。
まずは受け入れに反対する人の意見、
受け入れに賛成する人の意見、
何名かの個人的な視点からの意見を聞いた。
受け入れ反対の意見としては、
家族や親戚、大切な人に被爆して欲しくない、
汚染されらた地域から避難してきている人がいるから、
そこに仮置き場を置くことは避けたいなどといった意見が出た。
賛成する意見としては、
誰かが受け入れなければならないなら受け入れてもいいが、
それは、仮置き場が置かれる期間などが、
はっきり説明されればということであった。
そこでサンデル教授はこのような提案をした。
サンデル教授を役人とみたてて、実際にやりとりをしてみようと。
どんなやりとりになったのだろうか。
役人役のサンデル教授が、
「あなたは何を知りたいですか?
最終的に同意するために、
どういう補償や説明をしてほしいと思いますか?」
すると彼は予想外の答えをした。
はっきりとした期間を知りたいと言っていた彼がした質問はこうである。
「どういう補償を受けられるんでしょうか?」
これはとても面白い実験だった。
サンデル教授は、
仮置き場を受け入れるために必要な答えの2つを導きだしたのだ。
それが、期間と補償である。
やはり実際に仮置き場を受け入れることになった場合、
誰もが知りたいことだろう。
それに対して、行政はどう対応しているのだろうか?
ここで、サンデル教授は、
伊達市の区長である佐藤氏を招いて、
実際に仮置き場の期間をたずねた。
答えは曖昧なものであった。
3年を目処にしているとのことであるが、
中間処理場が早くできないと、
仮置き場の期間が実際何年になるのかはっきりした答えができないという。
3年になるか、それ以上になる可能性は五分五分だそうだ。
そのような説明では、
やはり自宅の近くに受け入れるという人は、いないそうだ。
国のほうで中間処理場を早く決めくれなければ、
はっきり答えられないと何度も訴える佐藤氏。
ここでサンデル教授は受け入れたくないと答えた人たちに、
実際に佐藤氏へ直接質問をするという形をとった。
結果は、
確実な期間、確実な補償、確実な説明を求める質問者に対して、
佐藤氏の答えはすべて曖昧なものとなった。
やはり、中間処理場を作ることを国が進めてくれない以上、
佐藤氏は何も確実なことは答えられないのだ。
この部分のやりとりは、
おそらく誰もが佐藤氏に対して苛立ちを覚えるであろう。
しかし、サンデル教授はこれらのやりとりの中から、
隠された問題を浮かび上がらせる。
それは次の動画へと続く。
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